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INTERVIEW

子供のために作りたい 『おうちパン』が秘める可能性

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吉永 麻衣子先生

吉永 麻衣子先生

1981年生まれ。兵庫県宝塚市出身。
聖心女子大学卒業後、2003年に一般企業入社。
法人営業や営業戦略、新規事業立ち上げを経験後、パンの世界へ。
専門学校講師、カフェキッチン、日本ヴォーグ社ハッピークッキングの立ち上げ等経験し、自宅にてパン教室をスタート。
忙しいママも毎日焼けるパンが好評に。
現在は、外部での講師と、企業とのレシピ開発や雑誌へのレシピ提供、書籍の出版、コラムの執筆等、幅広く活動。
cookpadLive「オーブンいらず楽ちんパン」出演中。
キッチンから家族を応援!手作りのシアワセをつなぎたい!
自身もパパとかわいい3男児と5人家族。

辿り着いたパン教室運営への道

Q パン教室を始めたきっかけを教えてください。

今から10年ぐらい前に豊洲のマンションでパン教室をスタートしました。

元々は営業の仕事が好きで働いていましたが、一生そこで働くイメージが持てなくなり始めた時期がありました。それに重なり、当時は結婚前ですが主人が仕事の都合で平日も自宅に居たり居なかったりという生活スタイル。これで私が平日5日間フルで働いて、土日家に居ても、きっと擦れ違いの生活…。「何か家で仕事が出来たらいいな」というのを何となくずっと考えていたんです。

そんな時、当時お付き合いしていた彼が仕事で2年間アメリカに行くことになりました。私は、東京にいる理由がなくなったので同じ会社で関西支社に転勤し一度実家のある関西に戻り、その時にパン教室に通い始めました。それが、パン作りとの出会いです。

たまたま通い始めたのはホームメイド協会※1「食の安全と健康」を重視した手づくり総合教室「ホームメイドクッキング」でした。その後通い始めたメープルキッチンは、『教室を開きたい人の為の教室』だったんです。当初は、パン教室を開くつもりはなく、パンについて学びたいという気持ちだけで通っていました。しかし段々と「みんなパン教室を開くことを目指しているんだ!」ということに興味をもち、「ああこれだったら自分にもできるかもしれない」と思うようになりました。

『食』を扱う仕事の世界では、年齢を重ねることがマイナスにはなりません。また自宅で好きなようにスケジュールが組めて、やりたいことができるのは良いかもしれないと思いました。

結局、パン作りを学んでから2年後、東京に戻ってきた時にはパン教室を開きたいという想いが強くなっていたので結婚を機に会社も退職してパン教室をスタートしたような感じです。

『おうちパン』が引き寄せるコミュニケーション

Q 『おうちパン』とは、どういったパンなのでしょうか?

色んなものを削ぎ落として、最低限の工程だけを残したもので作れるパンを『おうちパン』としています。

こねるのも、家庭のボールを使って5分程度で済みます。最大の特徴は発酵と焼き方にあります。

発酵は、冷蔵庫の中で1日寝かせて発酵させます。そして次の日に焼いていくのですが、普通ならオーブンを温めて焼くのが一般的です。『おうちパン』ではオーブンを使わず、トースターや魚焼きグリル、フライパン等で焼くという点が大きな特徴です。

このような作り方ですので、勿論お子さんと一緒に作れます。やっていると「自分もやりたい」と言って興味を持ってくれるお子さんも多いので、お子さん人気も高いと感じています。

『おうちパン』の中でも特に人気のレシピは『ドデカパン』です。レシピ本として出版もしています。『ドデカパン』で驚かれることは、材料を保存容器の中に全て入れて、スプーンでグルグル混ぜるだけで生地が完成する手軽さです。それを一晩冷蔵庫に置いて発酵させ、次の日にトースターで15分焼けば焼き上がるので、みなさんびっくりされます。そしてさらに、『ドデカパン』はアレンジが無限大。生地にチーズやチョコチップを入れたり、生地の色はココアパウダーや抹茶パウダーを入れれば、いくらでも好きに変えられるので、初心者の方でも挑戦しやすい『おうちパン』レシピ、人気もナンバー1です。

また、私が作った9種類のレシピを使って講座を開いていただく『おうちパンマスター』という資格があります。

本を出版したあと、全国のパンの先生方からレシピを使いたいという声をたくさんいただくようになり、それに応える形で「おうちパンマスター」をひとりでスタートしました。100名を超えた頃、cotta※2お菓子・パン作りに必要な資材などの商品販売やコンテンツを発信するECサイトの方と話す機会があり、共同運営をすることになりました。

各地で出会う生徒さんからの声

Q ワークショップやデモンストレーションに参加される生徒さんについて教えてください。

1回につき15人~30人程度でワークショップやデモンストレーションを中心に実施しています。モニターなど手元を見るための環境があれば、最大で70人に講座を開いたこともあります。その時は小学校のPTAからの依頼でした。

参加していただいている6~7割が30代~40代前半のママさん世代で、残り3割ぐらいが20代、60代の生徒さんです。常に幅広い層の生徒さんにご参加いただいています。

ゆくゆくはターゲット層に絞った講座を行うこともチャレンジしていきたいと考えていますが、今は大きな軸としてママさん達への講座を行わせていただいています。

現在は全国にいる2500人のおうちパンマスターのうち半分くらいの方々が、自宅、外部のカフェ、保育園や高齢者施設を中心に回講座を開いてくれていますので、徐々に『おうちパン』が広まっているかなという印象ですね。

パン教室に通う方の目的は大きく分けて2つあり、1つは、本当にパンが焼けるようになりたいという生徒さん。2つ目は癒しの時間や自分の趣味で楽しみたいと思う生徒さん。

私の所に来られる方は前者が多く、特に家でお子さんのためにパンが焼きたい人が多いようです。

子育ては、先が見えなくて、終わりが見えず、過去に会社に勤めていてやりがいを感じた方こそ、子育てを辛く感じることが多いように感じます。

そういった大変な子育て中のママさんに、小さな達成感ではありますが、「パンが作れた!」や「子供が喜んで食べてくれた!」など、子育ての息抜きに使っていただくのも良いかなと思っています。きっかけはパン作りですが結果的にママさん達の憩いの場になっているんだなと感じると、お教室を開いていて良かったなと思います。

経験を活かしての運営するママさん向けレシピ

Q 教室運営に関して教えてください。

以前は1人で全て運営していました、最近はメディアへの出演が増えたのと、cottaと一緒に運営しているおうちパンマスターの存在が大きく、私の動き方も変化しています。

例えば、ホームページの運営も、初めは1名でしたが、現在は運用フェーズへ移行しもう1名増え、2人体制になりました。1人はHPを制作して下さったデザイナーさん、もう1人は広報のような役割を担ってくれていています。

これまで運営や集客の面において、あまり苦労を感じたことはありません、そこは人材系の仕事をしていた経験が活きたのだと思います。

以前は、普通のパンレシピで講座をしていて、生徒さんには無理をさせてしまっているなとの思いがありました。生徒さんはママさんを対象としていた為、「子連れや抱っこしながらでOKです」としていながら、パンが焼きあがるまで2時間もかかるので、子どもに無理をさせてまでパン作りをする必要はないと思いました。

その経験、思いから考案したのが『おうちパン』です。短時間で、安全安心な材料をママさんがちゃんと選べ、おうちの中でママがパンを家族に焼いてあげることができる幸せ。レシピよりもそれが伝わると嬉しく思います。手作りは最高の愛情表現です。

海外進出への助走期間

Q 今後の目標を教えてください。

『おうちパン』は国内でもまだ知らない方がたくさんいると思います。1人でも多くの人に負担なくお伝えしたいので、歩けば『おうちパン』の教室があるような風景が目標です。それから海外でも『おうちパン』を展開したいという目標もあります。私の本も海外向けに翻訳されていて、そこから反響をいただくこともあります。あとは海外へ赴任する方々がいるので、そこで『おうちパン』の教室のようなワークショップを開いて、レシピを教えてくれている方もいます。パンをきっかけに、人とのコミュニケーションがひろがり、さらに自分も楽しい時間を過ごせる人が増えたら良いなと思っています。

私自身まだまだ全力では走れてはいないと感じています。来年の4月に1番下の子が幼稚園に週3日通うことになるので、そしたらまた自分の動きも少し変えられるかなと思っています。

まだ子育て真っただ中なので、全力で駆け抜けることはできませんが、子育て中だから感じられることを大切にレシピに活かしていきたいです。

References
1 「食の安全と健康」を重視した手づくり総合教室「ホームメイドクッキング」
2 お菓子・パン作りに必要な資材などの商品販売やコンテンツを発信するECサイト

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