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INTERVIEW

〈前編〉好きを仕事にすること~生徒の喜びが教室運営の糧となる~

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栗田 登志子先生

栗田クッキングサロン

栗田 登志子先生

栗田クッキングサロン

1964年生まれ 武庫川女子短期大学英文科卒業 
その頃から本格的に『フランス家庭料理』『家庭でできる中華料理』『パン専科』など習い始め、『基礎料理及び懐石料理』を3年間に亘り習得。その後助手を務めながら知識をより深める。
女子栄養大学 専門料理過程を終了し、1999年「栗田料理教室」開設。
現在は「栗田クッキングサロン」として教室を主宰。
2005年より教室レシピの作り方動画DVD『ビデオレシピ』制作を始め、現在レシピ動画数約1000本
著書 DVD付きレシピブック『お家が料理教室』、『1週間使い切りレシピ』
保有資格
教員認定特別師範 / 食育インストラクター 1級 / ジュニア野菜ソムリエ / フードアナリスト / 調理師免許/神戸市優秀技能者受賞 / 神戸フランス料理研究会 理事 / 西洋調理技能士会 副会長 / 西日本料理学校協会会員校

教室について

オリジナルメニューの家庭料理、オーソドックスな家庭料理、本格的に見える日本料理やパンお菓子、魚を捌くコースなど多彩なコースより、その月のメニューを見て好きなコースを自由な日程でご受講頂けるシステムです。全てのコースで余分な手間をかけずに美味しく、をモットーに誰でも確実に美味しく作れるレシピをご提供しています。

6名様迄の少人数できめ細かくご指導、和気あいあいと楽しいレッスンで一人ひとりを大切にその方のレベルに合ったご指導を心掛けています。素材の選び方に始まり、切り方、火の入れ方や細かなポイント、洗い物を減らして効率よくお料理するコツなど、ネットやテレビ、料理本だけでは分からないポイントを交えたレッスンはご好評を頂きリピーター率は90%以上。作り方の動画DVDもあるので、復習用や習えなかったお料理もご自宅で見ながら作れるとご好評をいただいています。

Q前職について教えてください

大学では英文科を卒業し、選んだ職業は商社です。料理は子供の頃から好きでしたが、その頃は仕事にしたいという気持ちは全くなく、OLに憧れて商社に就職をしました。海外で活躍したい!という夢もありましたが・・・配属された部署は営業でも海外事業部でもなく総務課でした。そこで得たものは、人とのコミュニケーション能力。またパソコンもない時代でしたので、若干の経理の知識でしょうか。商社には5年程勤め、当時の主流だった寿退社をし、その後、3人の子供に恵まれました。

Q開業のきっかけは何ですか?

子育てをしながら、日中家で子どもとだけの生活している事に訳の分からない焦りと諦めを感じるようになっていました。このまま私の人生は子育てで明け暮れ、それが終わった頃には自分には何も残っていない…このままでは嫌だけど、どうすればいいかも分からない・・・と。

その気持ちを紛らわすため、ママ友を呼んで持ち寄りパーティやランチ会をするようになりました。しばらくしてママ友から「友達を集めるからお料理を教えて!」というリクエストがあり、材料費と必要経費のみをいただいて料理教室のようなことを開催するようになりました。今思うと、自分自身が楽しむ場としていた気がします。

そのうち阪神淡路大震災があり、住んでいたマンションは、倒壊は免れたものの全壊扱い。1年後、新居に引っ越す事になりました。この震災を機にご近所の方とも仲良くなり、お隣の方には引っ越しの際も、とてもお世話になったので、お礼として私の得意な懐石料理でおもてなしをしました。その時に言われた言葉が、「これほどのお料理を自分と家族だけのものにしておくのはもったいない。是非お家でお料理を教えてみたら?子供が小さくても家にいてあげられるし、何より習いに来た人だけでなく、その人の家族も幸せにしてあげられる素晴らしい仕事じゃない!」 と。

正にこの最後の「沢山の人を幸せにしてあげられる」という言葉が私に火をつけたのです。

Q開業方法を教えてください。

仕事として料理教室をすると言っても、何から始めて良いか分かりませんでした。お金をいただけるだけの事が教えれるのか、自信もないし、どうやって生徒を集めて良いかも分からないし。そう、気持ちが揺らいでいるのを見透かすように数日後1枚のチラシが入ってきたんです。

個人宅で、少人数で開設している料理教室のチラシです。正しく私がやろうと考えているスタイルだったので、とりあえずどんな感じでお教室を開講していらっしゃるのか、自分にも出来そうなのか?という視点で勉強したいと思い、早速お料理教室に参加してみることにしました。

そこでは50代後半くらいの先生が、とても楽しそうに「私は一生この仕事を続けたい!」とイキイキされていたのがとても印象的でした。実際にレッスンを受けてみて、僭越ながら自分の持つ料理の知識や技術に自信を持ってもいいかなと思えたのが開業への決心へと繋がりました。レッスン後、帰りの電車の中ではコースや金額を頭の中で構想し、自宅に帰るとすぐにワープロ(その頃はパソコンがありませんでしたので)でチラシを作り、コンビニでコピーして近所に配るという作業を何の迷いもなく始めていました。

Q開業時に苦戦したことは何ですか?

開業当初に苦戦したことは、やはり集客でしょうか。

お料理の知識以外は何も持ち合わせていなかったのでチラシを100枚配ったら半数くらいは電話がかかってくるのではないか、外出もできないな、なんて今考えるとおめでたい無知な私でした。

子供を保育園に預けながら、来る日も来る日もコピーしてはチラシ配布。でも電話は1本もかかりません。開業当初の2~3か月の月収は、2~4万円程度。だんだん気持ちも沈んでいきました。

しかし「こんな事をしていてはいけない、広告を出そう!」と気持ちを切り替えることに。と言ってもその当時は、今と違ってインターネットもなかったのでどんな方法で宣伝していいのかも分からず、定期的にポスティングされているミニコミ誌に広告を出稿してみることに。ミニコミ誌は私自身が普段からよくじっくり読んでいたものなので、一番手近な広告媒体だったんです。

そして一番リーズナブルだった、2~3行の文字広告を出す事に。広告は1行単位の金額、という値段設定だったので その当時はそこまでお金をかける余裕もなく、3行ほどの文章だけの広告です。博打のような・・・。たった数万円でしたがその頃の私にとってはとても勇気がいりました。

『簡単で美味しい和・洋・中を月替わりで。栗田料理教室 電話番号』という内容も全く分からない暗号のような文章。今思うと、よくこの3行で沢山の方がお越しくださったな、と思います(笑)

広告を出稿した後2~3日目に、1件お電話があり、それから1週間ほどの間で数名の方からお電話をいただきました。その後も継続して教室に通っていただけることにもなり、月に2回は教室として開催する事が出来るようになりました。

料理教室では生徒さまと一緒に試食しながらお話も弾み、お友達のような感覚でとても楽しめた事を覚えています。そのうちメニューもリクエストして下さるようになり、お友達も紹介していただいたり、徐々に生徒数も増えて行きました。現在の登録生徒数は700名ほどになっています。

Qホームページは、いつくらいから対応されましたか?

ホームページは開業3年目くらいから巷にボチボチ出始め、生徒さまからも勧められていました。たまたま生徒さまの中にパソコン教室の先生がいらっしゃったので、その方にレッスンの後に時間を取っていただき、教えてもらいながら『ホ―ムページビルダー』というソフトを使って自分で作りました。しかし、ホームページを見てもらえるのはアドレスをお教えした生徒さまだけでした。その後、知り合いにページ制作をしている方を紹介していただいて依頼しましたが、何分素人に近かったので、かなり期間もかかった上、費用もお支払いしましたが SEO対策※1検索結果で自社サイトを多く露出をするために行う対策のことも何もなかったので、同じく生徒さまにしか見てもらえないホームページでした。

その後も依頼先を変えて作ってもらいましたが、2度ほど失敗に終わり、ようやく現在のホームページ制作会社とのご縁があり、そこでやっと望んだ通りのホームページを作っていただく事が出来ました。通常はテンプレートに埋め込んでいくやり方の所が多かった中、そこはシステムの会社だったので、プログラムから作って自由自在に望み通りに作って下さり、SEOに関してもしっかり対策をして下さっていたので、おかげ様で「神戸料理教室」で検索すると上位表示されるまでになりました。SEO対策は、重要なポイントですね。

Q DVDを出版されていらっしゃいますよね?

開業後、5~6年ほどで子供の学校の行事日と日曜日以外は毎日レッスンを開催していましたが、ありがたいことに毎回満席で、予約が取れないという状態になったため、料理の作り方を動画に撮ってDVD販売するという方法にいき着き、最初はほとんど生徒さまだけにしか販売していない状況でした。そんな時、生徒さまから「もったいないから是非本にしては?」と進めていただき DVD付きの本を制作する事にしました。

DVD付きの本は、知り合いに校正をお願いし、DVDのコピーはネットで調べて業者に依頼、冊子やケースの印刷は紹介していただいた所に依頼し・・・と出版社を通さず、すべて自身で行いました。

発刊後は直接本屋さんに足を運んで交渉し、限られた期間だけでしたが 4~5店舗ほどで販売していただきました。現在はAmazonHPのみで販売しています。もう一冊の本(1週間使い切りレシピ)も生徒さまからの要望で出版に至りました。こちらは出版社に投稿した所、A判定を頂き、出版社の方で費用を半額ご負担いただけることになりました。

出版に際しての撮影は素人ながら、一眼レフを購入して見よう見まねで撮影しましたが、試作を作り料理を撮影する時間は決まって夜になってしまうので、色合いが悪く、納得いく画像にならなかった覚えがあります。DVDレシピブックの時は、実際に教室で行っているビギナー向けのレッスンメニューをそのまま本にし、作ってあった動画をまとめたので、さほど大変さはありませんでした。しかし、出版社を通して出版した「1週間使い切りレシピ」は 、生徒さまの要望をすべて組み入れたため、メニューの組み立てや献立の内容を決めるのに1年近くかかりました。材料を残さず使い切る、作り置きをしてアレンジする、料理初心者でもそれを見れば作れる、手抜きに見えない、誰もが喜ぶおいしい料理など、これらのコンセプトを組み入れた内容ができた時点で出版社をあたり、デザインは丁度娘が芸大に通っていたので、その知り合いに依頼・・・、結果、企画から発刊まで1年半程かかりました。

出版時に発生した費用は、2冊合わせると 大体300~350万円くらいでした。また売上は、両レシピ本で 現時点でおおよそ500万円程です。

次回、後編では1日のタイムスケジュールやこれから開業をしてみたいと思っている方へのメッセージをお伝えいたします。

References
1 検索結果で自社サイトを多く露出をするために行う対策のこと

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